ボヤンシクってそもそも何?
ボヤンシク(보양식)は漢字で「補養食」と書き、体に栄養をつけるための料理のこと。特に夏に食べる習慣が根強く残っていて、日本の「土用の丑の日にうなぎを食べる」文化と発想がよく似ています。
ベースにある考え方が「이열치열(以熱治熱)」。熱には熱で対抗する、つまり暑い夏だからこそ温かくて栄養価の高いものを食べて、体力を落とさないようにしようという発想です。
日本でも「夏は冷たいものを取りすぎると胃腸が弱る」と言われることがありますが、その感覚に近いですね。
夏に食べる代表的なボヤンシク5選
1. サムゲタン(삼계탕)— ボヤンシクの象徴
若鶏の中にもち米・高麗人参・ナツメ・ニンニクなどを詰めてじっくり煮込んだ、韓国を代表するスタミナ料理です。
スープはあっさりしていてやさしい味わいですが、鶏の旨味がしっかり染み出ていて飲み干せる美味しさ。お腹の中にはもち米がぎっしり詰まっているので、見た目より食べ応えがあります。高麗人参のほのかな苦味とナツメの甘みのバランスが絶妙です。
夏になると専門店には行列ができ、後述する「ポンナル(복날)」の日は予約なしで入れないこともあるほど。ソウルのサムゲタン専門店では、2026年時点で1杯15,000〜20,000ウォン前後が目安です。
食べ方のコツ: テーブルに置いてある塩とコショウで自分好みに味を調えるのが韓国流。一緒に出てくるカクトゥギ(깍두기/大根キムチ)をはさみながら食べると、口の中がリセットされて最後まで飽きません。
2. チュオタン(추어탕)— どじょうのスタミナスープ
「どじょう?」と聞いて少し構えてしまう方もいるかもしれませんが、チュオタンは韓国でかなりポピュラーなスタミナ料理です。どじょうをじっくり煮込んですりつぶしたスープで、とろみがあって濃厚。唐辛子やニンニクでしっかり味付けされているので、クセが少なく、意外と食べやすいです。
日本の柳川鍋をもっとスープ状にした感じ、と言えば近いかもしれません。夏バテ気味のときに「チュオタンでも飲んで元気つけよう」という感覚で行く人が多い、庶民的なスタミナ食です。好き嫌いが分かれる料理なので、韓国グルメ初心者の方はサムゲタンやユッケジャンから試すのが無難です。
3. 장어(ジャンオ)— 韓国式うなぎの塩焼き
韓国でも「うなぎ(장어)」は夏のスタミナ食として人気があります。日本との大きな違いは調理法。韓国では蒲焼きではなく、塩焼きが主流です。
タレではなく塩とごま油でシンプルに食べるスタイルで、皮はパリッと、身はふわっと仕上がります。韓国のごま油(참기름)は日本のものより香りが濃厚で、仕上げや漬けダレに使うことが多く、このシンプルな食べ方とよく合います。
日本のうな重とはまた違う美味しさがあるので、うなぎ好きの方にはぜひ食べ比べてみてほしい一皿です。
4. ユッケジャン(육개장)— 辛さでスタミナチャージ
牛肉の細切りと、もやし・ニラ・ゼンマイなどの野菜をたっぷり入れたピリ辛スープです。
「温かいスープ+しっかりした辛さ」の組み合わせが大量の汗をかかせてくれて、それがまた心地いい。「辛いものを食べて汗をかくと、そのあとスッキリする」という感覚は、日本の担々麺や辛いカレーを食べた後の感覚に近いかもしれません。
スープ系ボヤンシクの中では最も辛いカテゴリーに入りますが、それゆえに夏の食欲がないときでも「なぜか食べられる」という声が多いです。
5. 鶏の煮込み・焼き料理いろいろ
鶏を使ったスタミナ料理はサムゲタンだけではありません。
- チムタク(찜닭) は鶏肉をじゃがいもや春雨(당면)と一緒に甘辛い醤油ベースのタレで煮込んだ料理。スープというよりしっかりした煮込みで、がっつり食べたい日にぴったりです。
- 닭불고기(タクプルコギ) は鶏肉をコチュジャンベースのタレで焼いたもの。サンチュに巻いて食べるスタイルで、夏のランチにもよく合います。
どちらもサムゲタンとは違うアプローチの鶏料理ですが、栄養補給という意味では同じ「ボヤンシク的発想」から食べられることが多いです。
日本の「土用の丑の日」と韓国の「ポンナル(복날)」を比べてみた
ここが一番面白いポイントです。日本と韓国の夏のスタミナ食文化、発想は驚くほど似ているのに、中身はそれぞれ独自に発展しています。
| 比較項目 | 日本 | 韓国 |
|---|---|---|
| 基本的な考え方 | 夏バテ防止にスタミナ食 | 以熱治熱(熱には熱で対抗) |
| 象徴的な日 | 土用の丑の日(年に1〜2回) | ポンナル(초복・중복・말복の3回) |
| 日にちの決め方 | 土用の期間の丑の日 | 干支の「庚(경)」の日を基準とした暦 |
| 代表料理 | うなぎの蒲焼き | サムゲタン |
| 食べ方の習慣 | うなぎ専門店・スーパーで購入 | サムゲタン専門店に家族や同僚と行く |
ポンナル(복날)は初伏(초복)・中伏(중복)・末伏(말복)の3回あり、だいたい7月中旬〜8月にかけて訪れます。この日はサムゲタン専門店が予約でいっぱいになることも多く、韓国の夏の風物詩として今も根付いています。
韓国でボヤンシクを食べるときに知っておくと役立つこと
汗対策は必須です。 サムゲタンもユッケジャンも、食べると汗が吹き出します。ハンカチやタオルを持っていくか、お店に置いてある물티슈(ウォーターティッシュ)を活用しましょう。
一人でも全然OK。 韓国では혼밥(ホンバプ/一人飯)が完全に定着していて、サムゲタン専門店でも一人客は珍しくありません。一人旅でも気軽に入れます。
味は自分で調整する。 サムゲタンは最初から塩気が薄めです。テーブルの塩とコショウで調整するのが韓国流なので、薄いと感じても慌てないでください。
日本でも試せる!ボヤンシク食材
韓国に行かなくても、日本の韓国食品店やネットショップで手に入るものがあります。
- サムゲタンの素(スープパウチ) は新大久保・鶴橋の韓国食品店やAmazonで購入可能。1袋で2〜3人前作れて、本格的な味が手軽に楽しめます。
- 韓国高麗人参(紅参エキス) はドリンクやスティックタイプが人気。日本のドラッグストアでも見かけるようになりました。
暑い夏、冷たいそうめんもいいですが、たまにはアツアツのサムゲタンで汗をかいてみるのも悪くありません。まずはサムゲタンの素を買って家で試してみるか、韓国旅行のついでに専門店で本場の味を体験してみてください。

